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【連載:ダンチな人々vol.1 小柴さん(前編)】 団地を〈終の棲家〉に選んで、まちづくり事業に挑む


 

団地にかかわるステキな人に会いに行くシリーズ〈ダンチな人びと。〉

第1弾は、すすき野団地に住みながら、さまざまなまちづくり事業を行っている小柴さんです。団地再生事業の一環として企画されたデザイナーズリノベーションのお部屋、『団地Classic(クラシック)』でお話をうかがいました。

 

小柴さん(こしばさん)

すすき野団地に暮らし、管理組合理事長や自治会長を務めながら先進的な再生まちづくり事業に取り組む。社団法人「団地暮らしの共創」発足メンバー。




「終の棲家」として、すすき野団地を選びました。

すすき野団地に移り住んだのは4年前。

子どもが成長して妻と2人の生活になり、老後の「終の棲家」を探し始めました。


経済成長期に生まれ、私は東京の下町の戸建てで生まれ育ったのですが、「団地」そのものへの憧れみたいなものがあったり、集合住宅としての様式美的な憧れがありました。



2人とも介護の仕事をしていることもあり、お互いの相互の姿を想像すると、コミュニティが希薄でないところで、広すぎないところがいいと思い、団地を住まいにしようと決めました。



団地は昔に比べればコミュニティは希薄になったとはいえ、その残滓(ざんし、ざんさい)はあるだろうから、それを上手く活用すればいいと思いました。

手狭なスペースも夫婦二人であれば、十分なお互いのプライバシーを確保しながらも、住める空間がありました。

緑も豊富で棟と棟のスペースも確保され散歩するにもうってつけです。




エレベーターはありませんが、北側の部屋も十分に採光が取れ、窓を開ければ、家じゅうに風が通り抜ける住宅はそうそうにありません。


また、1戸はわずか49㎡ほどの住宅ですが、共有部を含めると80㎡ほど土地を所有することになり、横浜市の一角にそれだけの資産をわずかな金額で持てることも賃貸にない魅力でした。借りるよりも安いんですから。


建物の評価がなくなっても、土地の評価は残ります(但し勝手には売れませんが…笑)。


やはり一番のメリットは「人との距離が近いけど、プライバシーが確保されている」というところでしょうか?


人間は1人では生きていけません。

誰かと繋がって、そして「支え合い」「助け合い」「分かち合う」ことで生きていくのが人間だと思います。

そして、人間はいずれ誰しもが生まれた以上、死にます。そんな大きな家は必要ではなく、処分しやすいことも重要だと思いました。




「支え合い」「助け合い」「分かち合い」、より人間的に暮らせる家=団地だと思っています。


かつて、ミツバチの飼育に携わっていたことがあります。

壁式構造の団地は、剛性を持ったハニカム構造のミツバチの巣にも似ている気がしています。

ミツバチたちもそれぞれが役割を持って、巣の中で暮らしているのと、団地で人間が暮らしているのはものすごく似ているような気がします。はたらき蜂はみんなメスなんですが(笑)



自然界の多様性と人間界の多様性との近似というか、本来の自然の姿に近い形の社会が作れるのも団地ならではないかな?と思っています。

赤ん坊から子ども、大人、年寄りまで多世代が暮らす。そこには障がいを持った人だっているし、富める人も貧しい人もいる。

ごちゃまぜの社会です。





誰かを排する社会は健全ではありません。

「支え合い」「助け合い」「分かち合い」暮らせるのが団地ではないでしょうか?

より人間的に暮らせる家=団地・・・だと思っています。「家があってこその、住まいと暮らし」です。




衣食住の中で、「住まい」は何か忘れがちですが、「住」は一番大事なものだと思っています。そこを良くすれば、私たちの人生そのものがもっと豊かになれるはずです。


そんな素晴らしい家に住みたいからこそ、理事長になったのです(飛躍しましたが)。

その辺の話はまた別の機会にお話しします。



(後編につづく)



 



村上亜希枝(むらかみ・あきえ)/ライター

団地を愛する宅地建物取引士。多摩ニュータウンの不動産会社でお客様に団地を薦めているうちに、自身がすっかり団地好きに。現在は「 団地に住みたい人を、増やしたい!」を軸に、主に昭和期に建てられた団地の活性化に日々取り組む。趣味は団地巡り、山登り、アクセサリー作り。アキヱ企画代表。団地女子会メンバー。


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