4月のお天気のいい日、団地女子会のメンバーで横浜市緑区にある竹山団地を視察してきました。竹山団地は25の管理組合に分けられていますが、今回は16-2街区の管理組合を視察してきました。というのも、この16-2街区は管理会社ではなく、自分たちで団地を管理しているという珍しい団地ということですが、さて、どんな団地なんでしょうか…
※この記事は2019年6月に「アキヱ企画」に掲載した記事を再編集したものです。
【団地データ】
管理組合:竹山16-2団地管理組合法人
所在地:横浜市緑区竹山1-6-5(竹山団地1605号棟~1610号棟)
完成年月:昭和46年3月(2019年5月現在、築48年)
棟数・戸数:6棟・152戸(竹山団地全体では2860戸)
建物構造:4階建て階段室型PC造
分譲会社:神奈川県住宅供給公社
▶管理組合HP
敷地内を散歩するだけで、心が豊かになる団地。
鴨居駅からバスで10分足らずの竹山団地16-2街区は、緑に囲まれた高台に位置します。
団地内をぐるっとご案内いただき、ハード面で素敵だなと感じたのは2点ありました。
1点目は、植栽がバリエーションに富んでいて素敵なこと。
URを始め、私が見てきた昭和40年代の団地は、目隠しのためなのか、管理しやすいからなのか、住棟の前には同じ高さの木がまるで壁のように植わっている団地が多かった。
それに比べて、こちらは住棟ごとに植えられている木が違うし、お花も植わっていて「ガーデン」という感じ。
今、皆で(住民が!)バラのアーチを作ったり、住棟の間の芝生や斜面に階段を作って、敷地を散歩して楽しめるようにも力を入れているそう。
敷地内には桜の木も多く植えられ、まさに住みながらお部屋の中でお花見ができる贅沢な団地。梅の木が植わっていて、毎年たくさん梅がなって、その梅を採って梅酒や梅干を作る人もいるそう。いいな~、団地内で採れた梅酒で花見なんて、素敵すぎる。
ちなみに、こちらの団地は防災にも力を入れていて、住棟の前に災害時に自炊できるスペースが設けられている。これは凄いことだと思う。
家の前に火が起こせるスペースを置くなんて、危ないからと反対する人が多いと思うのに、よく話し合って、重要性を考えて置いたんだろうな。
団地の植栽の中でも、特に生け垣は、まるで壁のようになっている団地が多いように思う。住む人の家の中が見えないように、という配慮だと思うのですが、壁のような生け垣は、部屋の中からの眺望という観点からも、防災という観点からも、なにより見た目もイマイチなのではないかと個人的には思っていました。この団地のように、カーテンを開けて部屋の前にこんな素敵なガーデンが広がっていれば、暮らしに彩りが加わって素敵だろうな。
※追記:植栽に関して、住民の美化活動について取材した記事を書きました※
快適で省エネな室内設備
2点目は、外断熱改修、サッシ改修について。
こちらの団地は、サッシ改修だけでなく、なんと建物をぐるっと断熱材でくるむという外断熱改修工事を約10年前に施しています。住民の方たちの住まいに関するアンケートで「冬の結露がどうにかならないか」という意見が多くあり、理事会で勉強を重ね、約2億の工事費をかけて全6棟すべてを改修したというのです!
私も団地に住んでいるお客様から「結露がひどい」という声は割とよく聞きます。自費で室内を内断熱を施しているという例は聞いたことがあるけれど、建物全体の外断熱工事については、ごくわずか(例えば、多摩ニュータウンでは2件)。多額の工事費もかかるし、合意形成を得るのも難しいので実施するのはとても難しいのでは。
お聞きしたところ、この外断熱工事はエコポイントを利用して行われ、一部金融機関への借り入れはあったものの、住民の費用負担なく外断熱工事、サッシとドアの改修工事が行われたとのことで、二度ビックリです。
※追記:サッシ・外断熱改修に関して、住民にその効果を取材した記事を森ノオトさんに書いていただきました。竹山HPに掲載の記事はこちらです。
希少なペット飼育可の分譲団地
ソフト面でも、「100年団地」に向けた様々な取り組みが行われていました。その中から取り上げたいのは、ペット飼育不可から可能になったというところです。
元々は、他の分譲団地の多くがそうであるように竹山16-2もペット飼育は不可でした。しかし、どうしても隠れて飼っている人はでてきます(これも他の多くの団地の実情だと思います)。そこで、暫定的に今飼っている1代に限ってペットを容認することに踏み切ります。
ところが、そうすると今度は「ペット可」団地と思って新規入居者がペットを連れてくるようになり、いつまでもペットを飼っている住民がいる状態になります。ペットと住むことの癒し効果や若い人の入居を促すことなどの利点、飼育者のルール徹底などを踏まえて、ペット飼育可へと合意形成を図り、まずは猫の飼育を解禁しました。ペット飼育のルールの整備を経て翌年に犬の飼育も解禁したとのことです。
ペット可団地は、私が多摩NTで働いていた時(2000年代)、空室が多かった「URステラ聖ヶ丘」で、ペット解禁してから空室がほとんどなくなったことを思い出します。賃貸住宅ではありますが、ペット可住宅にしたことが、物件の魅力を高めたケースです。このようにペット可=物件の価値を高める側面もありますが、長年ペット不可であった団地をペット可にするには音やにおいの問題など解決する課題も多かったのではないかと思うのです。
現在、ペットと一緒に暮らしている世帯は15%となっていて、新規の入居者も順調に増えているとのことでした。
※追記:ペット飼育に関して、住民のペットの会について取材した記事を書きました※
そんなわけで、今回は100年団地に向けてソフト・ハード両方の整備を行っている竹山団地16-2街区(ブロック)を視察させていただきました。それでは、また!
村上亜希枝(むらかみ・あきえ)/ライター
団地を愛する宅地建物取引士。多摩ニュータウンの不動産会社でお客様に団地を薦めているうちに、自身がすっかり団地好きに。現在は「 団地に住みたい人を、増やしたい!」を軸に、主に昭和期に建てられた団地の活性化に日々取り組む。趣味は団地巡り、山登り、アクセサリー作り。アキヱ企画代表。団地女子会メンバー。
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